仕事観について


前回の記事「弱みを見せられる強さ」で、俺は仕事を取りに行くのにガッつかないと書いた。『こちらが出来ることを提案してダメならそれで良いと思っている』と。もちろん本音ではあるが、この文面だけ見るとただのやる気のない経営者にしか見えない(ある意味間違ってはいないがw)ので、この件について誤解のないように捕捉しておこうと思う。

そもそも仕事がなければ『ダメならそれで良いと思っている』どころの話ではない。節税も売り上げが上がって利益が出るからこそ必要な知識であり、まずは自分の好きなことや得意なこと、社会から必要とされるものを提供する対価として、代金(報酬)を頂戴しないことには何も始まらない。

俺の仕事について詳しくは書かないが(書けばすぐ身バレする)、ある分野で法人向けのサービスを提供している。集客はホームページからの問い合わせや既存顧客からの紹介がメイン。そのため自社のHPには事業内容の説明、実績、価格の目安、よくある質問などを事細かに記載し、無駄な問い合わせを減らして、なるべく条件に合う顧客だけの問い合わせがくるようにしている。また、ググればすぐ上位に出て来るように検索対策も当然行っている。

よく自社HPを作るだけで満足している経営者を見かけるが、あれはとんでもないバカだ。会社名で検索するのは既存顧客や競合他社、名刺交換後の見込み客などで、営業すべき対象の新規顧客は社名で検索などしない。「〇〇 大阪」など欲している商品、サービス、場所などの単語で検索をかけるのだからそれで上にこなければ意味がない。

職種によってBtoB、BtoC、CtoCなどターゲットとなる顧客層が異なるので、それぞれ効果的な集客方法は異なるが、どの分野においても集客は一番大切だ。良い商品を作ったり、質の高いサービスを提供することはもちろん大切だが、そもそも認知されなければ検討すらされないのだから。

自社のホームページとは24時間365日不眠不休で活動してくれる超優秀な社畜営業マンのようなもの。ここにどれだけ惜しみなく時間やコストを注力できるかはとても重要だ。当初は飛び込み営業や、ばら撒きDMといった原始的な集客も同時に行っていたが、今はひとまず一定の既存顧客が確保できたので、日々HPからの問い合わせを回転寿司のレーンから流れてくる寿司のように取捨選択している。

金持ち(利益率の高い取引)や融通の利く優良顧客は鮮度の高い高級ネタ扱いで、貧乏人(コストしか見ない)やウザい客はレーンを2時間ほど徘徊した廃棄ネタのごとく、ゴミ箱に次々と放り込む。こんなこと合理性を重視すれば当たり前のことだが『顧客には分け隔てない平等なサービスを!』という共産主義的思想の経営者には理解されないだろう。俺は一律料金のディズニーより、割高料金を設定して優良客と一般客を差別化するUSJ派だ。大阪人だからではない。

さて、いざ自分が取引したいと思う優良顧客を見つけたからといってそれで取引出来るわけではない。こちらが顧客を勝手に選んでも、取引に応じてくれるかどうかを決めるのは相手だからだ。そこで必要になるのが以前記事に書いた他者視点。視点を切り替える技術

決裁権を持つのは誰か、その人の相談相手やその人に意見できるのは誰か、選定で一番重視しているものは何か、そのためにこちらが準備・対応・提案できることは何か、現状(過去)はどうしている(た)のか、他社と弊社の違いはなにか、仮に値下げするのであればどのような交換条件なら下げた分の利益を賄えるか、どういう説明なら最短で分かりやすく伝えられるか、等。相手の視点からメリットを簡潔に説明して提案するのは営業の基本だ。

また、こちら側にはどのようなメリットがあるかを伝えるのも大事だと思っている。これをしない人は多いが、感謝されて嫌な気をする人はいない。まるで相手にしかメリットがないような言い方(こんな単価じゃうち利益ないです~等)は、相手がギバーなら恩の押し売りのような印象を与えかねない。俺はこちらがどれだけ有難い取引かを具体的に伝えるようにしている。相手は優良顧客なので「じゃあ値下げしろよ!」といった、いかにもクソな客が言いそうな返答が来ることもない(笑)

何にでも言えることだが、始めから決裁に至るまでの条件が揃っていることなど稀だ。不足している条件を満たすためには、こちらが譲歩できる、努力出来る範囲で相手に合わせる必要がある。恋愛であれば間口を広げるために容姿磨きに励むように。但し、自分が無理をしてまで合わせる必要はないし、弱みも隠さなくて良い。無理を演じれば苦しくなるだけというのが前回の記事の主張。

結果を出す人(目的を果たす人)は不足している条件を整えて、勝算を見越して勝負をかけている。何も数打ちゃ当たる戦略で運任せにしたり、相手の気分に委ねているわけではない。しつこいが決裁権を持つ側の視点に配慮しなければ自分の目的を果たすことは困難だ。頼み事1つにしても相手への気遣いを感じさせる人とそうでない人には雲泥の差があり、その気遣いの積み重ねが信頼関係の礎となる。

自分の理解者を見つけるというのは素の自分を出して受け入れてもらえる相手を探すことではあるが、自分も相手を理解し、受け入れることが大前提にある。相手の都合を考えない人は、自分の都合など考えてもらえないということ。

俺も自分が取引したいと思う顧客や案件のときは全力で取りに行っている。ただのやる気のない経営者ではないwということだけ誤解のないように仕事観と共にお伝えしたかった。

終演!