大阪都構想の経緯


2020年11月1日(日)大阪市を廃止し特別区に再編する、いわゆる大阪都構想の住民投票が行われる。それに伴い先日、政治に全く興味のない妻を「寿司食いに行こう」と言って中央区役所に連れ出して期日前投票を済ませてきた。

大阪府民でない人にとって大阪都構想や維新は馴染みがないし何で大阪は維新の支持率が高いの?と思うかもしれない。大阪人ではない妻も「吉村さんイケメン」程度の知識しかなかった。

今回は大阪都構想にいたるまでの経緯を大阪の政治を見守ってきた1人として簡単に説明したい。細かく書けばきりがないので国政の話等は割愛する。

今から15年前、大阪では 故 やしきたかじん氏が司会を務める「そこまで言って委員会」というローカル番組が放送されていた。主に政治をテーマに扱ったバラエティ番組で司会者のやしきたかじんや当時サブ司会者で現司会者の辛抱治郎とパネリストたちが議論を交わす。

そこにパネリストとしてレギュラー出演していたのが行列のできる法律相談所で人気を博していた橋下徹弁護士。番組内では国や役所の税金の無駄使い、政策、既得権益、公務員の行き過ぎた待遇等について厳しく批判していた。

しかし、テレビのコメンテーターとしていくら問題提起したり批判しようが現実は何も変わらない。そこで2007年12月、元々政治に興味があり周囲の後押しもあって大阪府知事選へ出馬を表明。タレントとして抜群の知名度と大阪自民の推薦もあり2008年1月に見事当選。個人的には維新政治はここから始まったと思っている。

知事就任後は同じく民間出身(アナウンサー)の平松邦夫大阪市長と政治初心者同士はじめは意気投合したものの水道事業の府市統合など重要な政策で衝突を繰り返すようになった。

2009年3月、老朽化で建て替えが必要な大阪府庁を咲洲のWTCビル(バブル時代の負の遺産の有効活用のため)に全面移転する橋下氏の構想が大阪府議会で否決。大阪自民内でも意見が割れていたため賛成派の松井一郎府議(現大阪市長)と他の府議ら5人が大阪自民を離党し2009年4月に新党を結成。翌2010年に橋下知事と合流して大阪都構想を政策の看板に掲げた地域政党「大阪維新の会」が結成された。

橋下氏が知事に就任して3年9ヶ月後。このまま大阪府知事と大阪市長が対立を続けている限り重要な改革が進まないので2011年11月、平松大阪市長任期満了に伴う大阪市長選に知事を辞職して立候補。現職、平松氏に一騎打ちを挑み大阪都構想の必要性を訴えた。大阪府知事の後任には松井一郎府議が立候補。

結果は維新圧勝でダブル当選。選挙期間中、演説や外出時には橋下氏に多数のSPがつくなど物々しい選挙だった。規制改革や既得権益の打破は利権を享受している反対派からそれほど恨みを買う命賭けの改革なのだと感じた。対する平松氏にはSPも何もつかなかった。

松井大阪府知事、橋下大阪市長就任後はすぐに府市統合本部が立ち上げられ事業を仕分け線引きすることで改革が進み始めた。なぜ大阪で維新が支持されるかというと維新が実務型政治で数々の改革をしてきた実績があるからだ。

・大阪府議会 議員定数削減(10 9→88)
 大阪市議会は維新単独で過半数がないため否決(維新以外は議員定数削減は反対)

・大阪府知事/大阪市長退職金カット、報酬削減

・財政再建(大阪府知事時代に3年間で事業廃止見直しで2400億削減/600億歳入を確保) 

・私立高校授業料無償化(所得制限有り)

・幼児教育無償化 18歳まで医療費助成

・中学校給食開始(今後は給食費無償化も)

・教育子育て予算8倍 2018年537億(平松市長時67億)

・天下り団体の排除、謎の補助金類カット

上げたらきりがないが子供に対する政策が素晴らしいと思う。政治家は人口数や投票率の高い高齢者や組織票を持つ組合、協会を優遇したほうが票をとれる。いくら子供の教育予算を増やしたところで取れる票はせいぜい子育て世代だが若い世代は政治に興味がないので選挙に行かない。よって政治家であり続けるための最適解とは老害優遇である。

自分に子供がいようがいまいが子供や子育て世代に向けた政策は、票を持たない子供に代わって評価すべきと思うが、敬老パスをくれるだの町内会費をくれるだの利権を守る政治家を担ぎ上げるのが老害だ。政治家で居続けることが目的の政治家と既得権益にあやかりたい有権者の利害は一致する。そうして腐敗が進み腐りきっていたのが過去の大阪だった。我々は彼らの私腹を肥やすために納税しているわけではない。

話はそれたがこのような経緯で現在大阪の改革は順調に進んでいるがこれは大阪府知事と大阪市長が同一会派であり個人間の信頼関係あってのもの。再び大阪市長が独自路線で暴走しだしたら一発で以前の大阪に逆戻りする危険を孕んでいる。

そうならないために大阪全体に関わる都市開発等の広域行政は大阪府に任せて大阪市は4区の特別区に編成する大阪都構想で役所の役割分担を明確にしたほうがいい。そのほうが圧倒的無駄を排除できて大阪はさらなる発展を遂げられる。

そうしてやっとの思いで漕ぎ着けた2015年5月の住民投票。

結果は20代~50代までは賛成過半数、60代以上は反対過半数により否決。まさに老害に潰された住民投票と言える。この結果を踏まえ橋下大阪市長は政界引退を表明。

住民投票否決後の2015年7月。反対派が「大阪市のままでも二重行政は解消できる!」と大阪都構想の対案として息巻いていた大阪会議(大阪戦略調整会議)は第一回目会議の冒頭で荒れに荒れて終了。8月の第二回会議は言い出しっぺの大阪自民党がまさかのボイコット。 大阪会議は一度も機能することなく音速で頓挫。

やはり住民投票を乗り切るためだけのその場しのぎの謳い文句だったか!!あのタヌキども!!

これに呆れた橋下市長と松井知事はやはり都構想に再挑戦することを決意。2015年11月の大阪市長選&大阪府知事選では松井氏と吉村洋文氏を橋下氏が全力で応援演説し、両氏のダブル当選を見届けたあと大阪市長の任期満了とともに政界を去った。

あれから5年

今回は松井大阪市長と吉村大阪府知事のコンビで2回目の住民投票までこぎつけた。これは政治家橋下徹の弔い合戦とも言える。(橋下さんはコメンテーターで以前よりいきいきしてるけど)

吉村氏も触れていたが今回否決されたらおそらく3度目はない。これが都構想実現をかけた最後の住民投票になるだろう。よって維新の改革路線を突き進めるためにはここで負けることは絶対に許されない。

ただ前回より希望もある。都構想が何なのかは世間に浸透してきたし、大阪市内の人口は増え続けている(若い人が増えている)。そしてこの5年間で老害も多少くたばって減ったはず。つまり反対派が消えて賛成派の割合が5年前より確実に増えている。

別に住民投票が可決されたところで自分の生活が変わるわけではない。それでも利権にしがみつく反対派の主張は見苦しいものがあるし、真面目に改革を進めている維新を応援したい気持ちが強い。

今回の住民投票は正直、大統領選よりよほど注目している。大阪市民の皆様はぜひ投票に行きましょう。