協奏曲 第-1番 第一夜

Kazさんの少し前の記事を改めて読んで感銘を受けたので俺も少し昔話をしようと思った。

この記事はとても長くなったので本日より連日連夜更新する。これは俺が非モテのゴミになるまでの話。興味をもって下さった方は是非お付き合いください。

 

協奏曲 第 -1番 第一夜

 

話は高校時代に遡る。

俺は地元も今の住居も大阪だがこの時期、訳あって地方の高校に通っていた。その子との出会いは高校時代のバイトだった。

高校に進学してからしばらくは様々なバイトを転々としたが、高1の最後に始めたバイトを俺は卒業までの2年ちょっと続けることになる。この経験が今の俺の仕事観の根幹を形成したと言っても過言ではない。

どこにでもあるレストランの厨房業務。ただ冷凍食品を温めて出すような店ではなく、エビフライなら殻剥きから背綿をとってパネ(衣付け)から仕込んだり、ホワイトソースは生クリーム、牛乳、バター、ホワイトペッパーから作るといった無駄に拘りのあるチェーン店だった。俺が料理を作ることに抵抗が無くなったのはこの経験が大きい。

その子は俺がそのバイトを始めた頃より少し前からホールで働いていた。別の高校に通っている同い年。小柄でちょっと派手めな化粧もする今風なJK。初めて会った時は、この子がこの先ずっと思い出の人となり、まさかこんな場でこのような話をする日が来るなんて思いもしなかった。

俺はバイトと学校を行き来する忙しい日々を送り始めた。

 

高2のGWを境に俺はこのバイトに膨大な時間を費やすようになる。チーフ(料理長)は気性が荒く、繁忙期にオーダーが溜まりに溜まって苛立つとフライパンを投げたり、鍋を蹴飛ばすようなキチガイだった。俺は社会の理不尽さを身をもって知り、怒鳴られながらも少しでも怒られぬよう無我夢中で仕事を覚えた。

学校で椅子に座って授業を受けていても金は貰えないどころか私学だったので馬鹿にならない授業料を払わなければいけない。その点、バイトは同じように時間を拘束されるが、自分の責務さえこなしていれば時給が発生する。

将来何の役に立つかわからないお勉強に時間を費やすぐらいなら、バイトで自分の時間を換金したほうがいい。高校なんてただの資格だ。卒業さえ出来れば中身などどうでもいい。短絡的な思考だがその子もそうだったのかもしれない。俺と同様に狂ったようにシフトに入っていた。

学校が終わって夕方~10時まではほぼ毎日バイト。土日の休みも朝から晩までバイト、祝日も連休もバイト、まさにバイト三昧。その子と仕事終わりの時間が被ったり、長時間シフトの時は休憩時間が被ることも多かったので、俺達は店の小さな休憩室で仕事の話、社員の愚痴、学校の話、恋愛の話、本当にいろいろな話をした。今思えばそんな他愛もない時間がその後2年に及ぶのだから何とも感慨深い。あまりにバイト熱心な俺の姿勢に周囲はドン引きしていた。

「君、高校生だよね?どんだけ働くの。」

労働時間をそのまま申告すると余裕で扶養から外れるため、友人名義のタイムカードの2枚持ち、深夜時間帯(違法)や残業分(違法)は社員からの現金手渡しなど何でもあり。進学クラスに入学したのに学業の成績は低下の一途をたどり、留年を避けるためには普通科への降格を余儀なくされたが、これに関しては全く後悔していない。

時間帯責任者にもなった。シフトリーダーみたいなもので同じ時間帯に入っているバイトに指示を出す。この恩恵は時給UPと毎月4千円の手当てだったが今思えばゴミみたいな額だ。労働者に微々たるエサを与えることで、その何倍もの労働力を搾取する。だが、そんな小銭や立場も当時の俺のちっぽけな自尊心を満たすのには十分だった。

その子も時間帯責任者になった。高校生ながら学業そっちのけで謎にバイトに没頭する者同士、周囲に全く共感されない2人の似た価値観は互いに惹かれる理由として十分だったように思う。

人は自分と似た人に好感を抱く。気付けばその子のシフト表を先々まで気にかけて自分のシフトと照合している自分がいた。

ある日、その子が俺に好意を抱いているということを別の女の子から間接的に聞いた。素直にとても嬉しかった。それからより一層その子のことを意識するようになった。男とはつくづく単純な生き物である。

どういう経緯だったか詳しく覚えていないが俺たちは晴れて付き合うことになった。初めての彼女ではなかったが今までで一番嬉しかった。17歳の秋頃の話。

バイトが終わればそのまま一緒に帰って俺の家に泊まることもあった。相手は処女ではなかったが、当時童貞だった俺は彼女に手を出すことすら勇気及ばず、同級生が次々と童貞を卒業して何人ヤッただの自慢(※誇張表現有り)している中、俺は思春期男子なら誰でも味わう特有の焦燥感に苛まれていた。

ただ、そうは言っても一緒に帰って一緒に寝て、次の日も朝から一緒にバイトに行ってと、一緒に過ごす時間が増えただけで童貞小僧の心は十分に満たされていた。今思えばどれだけ草食系なんだと思うが、誰だってそんな時期はあったんじゃないだろうか。

まぁ、当時の俺が目の前にいたら「さっさとkaiロールをぶちこめよ、童貞クソ野郎!」と罵詈雑言を浴びせながらヘッドロックをかまして気絶させたところで選手交代することは想像に難くない(退場しろ)。

 

だが、そんな日々も長く続かなかった。

俺は3ヶ月程度であっさりと振られてしまう。正直かなり好きだったので、まさに青天の霹靂といったところ。

「え?なんで?俺なんか悪いことした?」(Kazさんと全く同じw)

無駄にプライドが高く、強がりだったのでフラれた理由を聞くことはなかった。

その後バイトで顔を合わせても、互いの恋愛がまるで無かったように平然を装い接する自分が醜かった。死ぬほどダサかった。内心、動揺していて全く穏やかではなかったのに。

また黙々とバイトに励む日々に戻る。

高3の頃は友人に紹介してもらった子と会ったり、ネット(当時チャットをしていた)で知り合った子と会ったり、コンビニ店員にブーメランしたりと無駄に積極的ではあった。

その歳上のコンビニ店員と付き合った時に童貞を卒業した。純白な好青年(お前のことか?)が年上の手のひらに転がされるような右も左もわからないセックスだったが、想像ばかりが先行していたので感想は「なんだ、こんなものか」と拍子抜けるようなものだった。

この歳上彼女の指導の下、俺は技能習得に向けて厳しい修行に明け暮れた。しかし、そんな日々を送りながらもバイトでほぼ毎日顔を合わせるその子のことが頭から離れることはなかった。理由もわからずフレれたあとも、頻繁に顔を合わせているのだから当然と言えば当然か。

 

 

高校卒業とともに進学で俺は関西に戻った。

その子は地方に残った。もともとその地が地元だったのだ。

因みに初体験の歳上彼女とは進学と共に遠距離になり一瞬で破局した。新しい環境で連絡が疎かになったこと、進学先で出会う女に目移りしまくっていたことも女の勘で嗅ぎ取られ見事ゴミのようにキレ気味にフラれた。どうやら元カレと寄りを戻したようだ。

だが今回は全く動じなかった。初体験の相手ながら心底どうでもよく思えた。

フラれて心動じないというのは相手への関心度をより実感させてくれる一つの指標なのかもしれない。

 

事態が変わったのは高校を卒業して約1年後のことだった。

第二夜に続く