☓ 傾斜産業 → ○ 斜陽産業
読んでみて自分の事業と合致していて頷いた。ストックビジネスこそ雪だるま式に利益を上げられる優良ビジネスだ。売り切りだとそのときの売買差益(キャピタルゲイン)しか得られないが、蓄積制だと地盤の上にどんどん利益(インカムゲイン)が積み上がる。
何にでも言えるが即金性のものより、蓄積性のもののほうが複利も利くので長期で見た時に遥かに優る。だから自分の蓄積資産となるものに時間や金を投資するのが最も合理的な選択だ。本書には中小法人が利益を増やすための手法が多々書かれている。
絶海の孤島の王
俺の事業では日常的に消費されるモノを扱っている。品目を書けば検索で一番上に出てくるので書かないが、このモノを取り扱うサービス業を営んでいて、一度受注が決まれば顧客はほぼ継続的な購買対象となる。
サブスクリプションではないが顧客数の増加が売上(利益)を押し上げる。また、日常的に消費されるモノなので景気の影響も受けにくい。今までメイン事業の利益を別の取扱品目の追加に投資して少しずつ事業を多角化(横展開)してきた。
だが、どれも斜陽産業。というかこの時代に斜陽産業以外を探すほうが難しい。もちろんそれは余暇時間の消費財であるエンタメやスポーツ、遊び関係であることは間違いない。だから俺はこの演奏日記を毎週コツコツ書き続けているのだけど。
斜陽産業で市場がどんどん縮小するため、自分の事業の賞味期限は長くないと思っていた。AI、仮想通貨、ドローン、自動運転などの技術革新が人の仕事を減らしてくれる。しかし近年は売上が減らないどころか利益が増えている。
なぜこのような現象がおこるか理由は単純だった。俺の業界ではどこも慢性的な人不足に悩まされているし、経営者の高齢化や後継者不在の問題も深刻だ。するとこうなる。
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①仕事はあっても人手不足で受けられないor後継者がいないので廃業
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②依頼主(客)が他に受けてくれるところを探す。
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③ネット検索や紹介で弊社を見つけて見積り依頼
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④多少高くても他に頼むところがいないので契約
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⑤利益率が高く、給料を多く払えるので人材に困らない
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⑥他社が廃業するにつれ無双していく
上記フローにより今後も継続すれば市場縮小分の売上(利益)を確保出来ることに気が付いた。やはり従業員の待遇(時給)を上げることにフォーカスしてきたのは正しかった。「早く帰ろう」という経営理念は優れている。 そしてこれは俺の業界に限った話ではなく、斜陽産業全体に当てはまる。
斜陽産業は新規参入がないので継続だけで年々市場を独占出来る。あなたはもし親が畳の張替え会社をやってたら継ごうと思うだろうか?小麦粉の製粉工場をやってたら継ぎますか?古参の社員やウザい番頭がいる中、大して利益も出ない古臭い会社をわざわざ継ごうと思いますか?
斜陽産業だし、面倒くさいし、転職自由なサラリーマンを選ぶ人が多いから誰も継がないのだ。その結果、今、M&A市場には後継者不足に頭を抱える企業の売却案件が溢れかえっている。買い手が見つからなければ例え黒字でもいずれ廃業。つまり高齢経営者の企業が勝手に消えていき、残存企業のシェアが増える。そしてこの流れは今後ますます加速する。
企業買収に関してはこの本がオススメだ。
本書では起業をオススメしていない。要約すると全くの0から1にする能力(起業)と1から10にする能力(マネジメント)は異なる。サラリーマンが得意なのは後者なので、サラリーマンは中小企業を買収し、本業で培った知識、経験、情報を買収した企業の経営に活かせば利益が出せるというもの。
確かに、メールは使わない、電話ばかり、ホームページ無し、ネットバンキングも使わないみたいな古すぎるやり方を今もやってる中小企業はかなり多い。なぜならほとんどの中小企業経営者は高齢で情弱だから。
そういう企業は合理化でコストカットするだけで利益が増える。もし俺が買収したら徹底的に無駄を省き、効率化する。それで捻出した利益で雇用条件を改善して、待遇改善を元に社員の質を上げる。
会社の資産はブランド(信用)や設備や技術とか言われているが俺から言わせれば圧倒的に人だ。会社とは人の集合体であり、人が命。だから絶対にここをケチってはいけない。今社会で起こっている現象を見れば明白だが事業が上手くいっていないのは人材不足に困っている会社ばかり。
後継者問題も、もし莫大な利益が出ている会社なら継ぎたい人も出てくるはずだ(自分の子でなくても)。つまり、人材不足に困る会社(後継者不足も)はさっさと潰れたほうが世の中のためになる。
また、ビジネスは戦場も大事で、例えば美容院は絶対にホットペッパービューティーを使ってはいけない。集客やシステム(予約等)をプラットホームに依存すれば利益は全て吸い上げられる。堀江貴文さんが「あいつら(美容師)リクルート食わせるために働いてんの?」とディスっていたが美容院は独自で固定客を囲まない限り絶対に儲からない。いや、これは美容院だけでなくほぼ全業種に言える。
逆を言えば外部のプラットフォームに頼らずに独自で集客、運営が出来れば美容院もストックビジネスなので無双(めっちゃ儲かる)する。これを理解していない人は多いが、美容院も飲食店も、技術者や調理人など優れた実務者がいても経営者がいないので実態は弱小店ばかりなのだ。俺なら店のHPとインスタアカ、Twitterアカで情報発信したり、インスタやTwitterのインフルエンサーに営業をかけたり、近所にポスティングしたりする。
また、初回割引をしている美容院は多いが、あれは逆だ。初回のみ割増料金にして2回目以降を安くしたほうがリピーターはつきやすい。俺も新規取引時に初回のみ必要な費用を設定したり、2回目以降で割引単価を設定したりしている。こうすることで2回目以降が安いという心理と、1回目の割増分の元をとらなければという心理が生まれる。
さらに言えば「初回に割増料金とかないわ」というケチな愚客もスクリーニングできる。この初回割増法は俺が最近見つけた腕のいい美容師(オーナー)さんの店でも使われている。もちろんその店は予約の取りづらい大繁盛店。
事業者数の多さでレッドオーシャンに見える業界でも中身がレベル1の弱者ばかりなら実態はブルーオーシャン。参入障壁の低さ、事業者数、斜陽産業を逆手に取って考えれば勝てる市場はまだまだ転がっている。
さらに、市場がニッチで扱うものが専門性に特化しているほど無双するので市場の支配者になれる。そこは大資本の大手が参入しても大した利益が得られない(市場が小さい)から参入してこない独占市場。まさに絶海の孤島。我々が目指すべきは誰も辿り着けない絶海の孤島の王なのだ。
この本を読んでいたら他の事業もやりたくなってきた。また、ストックビジネスの利益を不動産投資に回したり、不動産を担保に受けた融資でさらに不動産投資で利回りを上げる話も面白かった。よかったら読んでみてください。
終演!
【 参考文献 】
中小企業の「ストックビジネス」参入バイブルサラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 (講談社+α新書)